飲酒運転のような悪質な事故のとき、慰謝料が通常より増額されますか。

被害者が死亡してしまった場合には、悪質な事故であることが死亡慰謝料の一定程度の増額事由となっていると思います。
被害者が傷害を負った場合には、傷害慰謝料(入通院慰謝料後遺症慰謝料)一律に増額されるわけではないと思われます。ただし、増額事由として評価される可能性はあると思います。

まず、被害者が死亡したときについて具体的に説明します。
死亡慰謝料については、実務上、被害者が一家の支柱にあたるか、一家の支柱に準ずるか、その他の場合かによって、ほぼ金額の幅が決まっています。
例えば、一家の支柱であれば2,700万~3,100万、一家の支柱に準ずる場合は2,400万~2,700万、その他の場合は2,000万~2,400万という幅の中で決まる場合が多いとされています。
この点、飲酒運転のように加害者が悪質な場合、この基準より高額の慰謝料が裁判上認められる傾向があります。
具体的には、以下のような裁判例があります。

①酒気帯び運転で、さらに30キロメートル以上の速度オーバーによる共同暴走行為の結果、追突事故を起こし、17歳の男子高校生を死亡させた事案で、死亡慰謝料として3,000万円が認められました(大阪地判平成12年1月19日交通民集33巻1号91頁)。
この事案の被害者は、「その他の場合」に該当しますので、基本的に2,000万~2,400万になりますが、それを大幅に超える3,000万円が認定されています。

②忘年会後の飲酒運転により、高速道路を逆走して衝突事故を起こし、61歳の会社役員男性を死亡させた事案で、死亡慰謝料として3,600万円が認められました(東京地判平成15年3月27日交通民集36巻2号439頁)。
この事案の被害者は、「一家の支柱」に該当すると思われますので、基本的に2,700万~3,100万ですが、相当程度の増額がされています。このように、悪質な事故であることの増額が一定程度認められる傾向にあります。

ただし、以上の裁判例はあくまで一例ですので、死亡事故の場合に必ずこれらの程度の増額がなされるとは限りません。

これに対し、被害者が傷害を負った場合については、傷害による入通院期間や後遺障害等級によって入通院慰謝料後遺症慰謝料の金額が変わります。
そのようななかで、悪質な事故であることから必ずしも増額がされているわけではないと考えられます。
ただし、飲酒運転等で加害者の悪質性が特にひどい場合には、状況により慰謝料の増額の可能性があると思います。